主婦をしながら在宅ワークやフリーランスをしている人の中には、扶養内で働いて税金や健康保険料を抑えたいと思う人もいるでしょう。
フリーランスとして開業届を出していても、扶養に入ることは可能です!
扶養の条件を事前に確認しておき、扶養内でお得な働き方を実現しましょう。
ちなみに、フリーランスとして働く主婦の私は、扶養に入る手続きをしようと夫の会社に申請したところ、条件をクリアできず入れなかったという失敗談があります。
この記事では、私の失敗談も合わせて、扶養の条件や扶養を抜けるタイミングについて解説します。
フリーランスの扶養とは
ひとくちに「扶養」といっても、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」「扶養手当制度」の3つがあることをご存知ですか?
特に注意が必要なのが「社会保険上の扶養」です。
それぞれの扶養の条件や金額について解説していきます。
税法上の扶養とは
税法上の扶養とは、世帯主(夫)の所得税の計算で「配偶者控除(配偶者特別控除)」が適用されることです。
配偶者(フリーランスの妻)の所得が一定金額以下であれば、控除が適用されることによって世帯主(夫)の税金の負担が軽減されます。
パートやアルバイトではよく103万円の壁、150万円の壁などといわれますが、それは給与所得控除が適用されるための収入の目安となっています。
フリーランスの場合は給与所得控除がないため、収入ではなく所得金額で見極める必要があるため注意しましょう。
所得金額=売上-経費-青色申告控除(65万or10万円)
所得と適用される控除
所得48万円以下:配偶者控除(48万円以下ならフリーランス妻本人の所得税もゼロになります!)
所得48万円超95万円以下:配偶者特別控除(配偶者控除と同じ金額の控除が受けられる)
所得95万円超133万円以下:配偶者特別控除(所得に応じて控除が減額される)
所得133万円超:控除が受けられない
配偶者控除・配偶者特別控除の金額一覧
配偶者控除の金額
控除を受ける本人(夫)の合計所得金額 | 配偶者(妻)の合計所得金額 |
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
配偶者特別控除の金額
控除を受ける本人(夫)の合計所得金額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 | ||
配偶者(妻)の合計所得金額 | 48万円超 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
参照:国税庁のHP
No.1191 配偶者控除
No.1195 配偶者特別控除
所得が多くなるとその分控除が受けられなくなりますが、働いた分を税金が上回るいわゆる「働き損」という状態にはなりません。
税法上の扶養はあまり気にする必要はないかなと思います。
社会保険の扶養とは
社会保険の扶養とは、夫が加入している社会保険に被扶養者として加入することです。
被扶養者と認められれば、社会保険料を払わずに健康保険・年金制度に加入できます。
被扶養者(フリーランスの妻)の年間収入が130万円未満かつ被保険者(夫)の年収の2分の1以下
フリーランスの場合、この「年収130万円未満」というのが迷うポイントですよね。この金額の計算方法について、後ほど詳しく解説します。
フリーランスは、社会保険の扶養を抜けると国民健康保険と国民年金を自分で負担しなければなりません。
国民年金保険料:月額16,520円(令和4年度)
国民健康保険料:月額約7,000円~8,000円(所得に応じた金額。年収140万円で計算。自治体によっても保険料率が異なります。)
このケースだと、社会保険の扶養を抜けることで28万円程度手取りが減ることになります。
経費などで所得が変わるので一概にはいえませんが、年収が130万円~160万円程度だと「働き損」になるといえます。
社会保険の扶養を抜けてしまうと一気に負担が増えるので注意しましょう。
扶養手当制度にも注意
夫の会社で「扶養手当制度」がある場合は、そちらの扶養にも注意が必要です。
扶養手当制度とは、企業が福利厚生として、扶養する家族がいる従業員に支給する手当のことです。「家族手当」などと呼ばれることもあります。
扶養手当の有無や金額、収入の条件は会社によって異なります。
自分が働き損にならないか、夫の企業の制度についてよく調べておきましょう。
社会保険の扶養の条件「収入130万円未満」とは?
ここから先は、主に社会保険上の扶養について解説していきます。
先ほどお話した通り、社会保険の扶養の条件は「年収130万円(月108,333円)未満」と決められています。
しかし、フリーランスで働いている人はこの「年収」の捉え方がいろいろありますよね。
例えば…
- 経費を引く前の売上のことなのか?
- 経費を引いたあとの金額なのか?
- 青色申告控除をした後の金額なのか?
実は、社会保険の扶養認定の収入の基準は夫が加入している健康保険組合によって異なります。
主に以下の2つのケースに分かれるので、加入している健康保険組合に確認しましょう。
- 「売上」が130万円未満のケース
- 「売上-経費」が130万円未満のケース
①「売上」が130万円未満のケース
経費を差し引く前の「売上」が130万円未満であることを基準としているケースです。
この基準を用いている健康保険組合の場合、経費は加味されず、純粋な売上が「130万円未満か」のみで判断されます。
②「売上-経費」が130万円未満のケース
「売上-経費」が130万円未満であることを扶養の条件としているケースです。
中小企業の従業員など多くの方が加入する保険である「協会けんぽ(全国健康保険協会)」もこれを基準としています。
ただし、認められる経費も健康保険組合によってはルールがあります。
多くの健康保険組合で採用されているのが「直接的経費」のみ認められるという条件です。
その費用なしには事業が成り立たない経費のことで、原材料費や仕入れ代、運搬費など。
在宅フリーランスの場合、自宅の家賃や電気代などを経費にすることがあると思います。これらは確定申告の際に認められても、社会保険の扶養を確認する際の経費としては認められない場合があるので注意しましょう。
どちらの場合も控除前の金額
収入の基準が「売上」なのか「売上-経費」なのかは健康保険組合によって異なりますが、どちらの場合も収入であって「課税所得」ではありません。
つまり、青色申告特別控除(65万or10万)や基礎控除48万円を控除する前の金額ということです。
協会けんぽの場合の社会保険の条件
多くの方が加入している協会けんぽ(全国健康保険協会)では、どのような条件になっているか見ていきましょう。
被扶養者の年収が130万円未満で、かつ被保険者の年収の半分未満であること
被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
自営業の方の年収は、年間総収入から直接的経費※を差し引いた 額となります。 ※直接的経費とは、その経費がなければ事業が成り立たない経費(例:製造業 における原材料費、小売業における仕入れ費)であり、それ以外の費用 (例:公租公課、宣伝費)は差し引くことはできません。
被扶養者資格の再確認と提出のお願い|Q5自営業の場合の年収確認はどのように行えば良いですか
協会けんぽの場合は、「売上-経費」が130万円未満の場合に社会保険の扶養に加入できます。
このように、社会保険の扶養の条件は健康保険組合のHPなどに記載があるので、まずは夫が加入している健康保険組合のHPの記載を確認しましょう。
曖昧な点があれば、問い合わせるのが確実です。
フリーランスになって扶養に入れなかった私の失敗談
ここで、フリーランスになって夫の社会保険の扶養に入れなかった私の失敗談をご紹介します。
私はもともと正社員で働いていたのですが、適応障害になったのをきっかけに休職中に在宅ワークを始め、フリーランスとして独立をしました。
退職して独立した頃は収入が少なかったので夫の扶養に入ろうと、夫の会社に申請をしたのですが…
自営業ということなので、収入の証明が必要です。確定申告の書類を提出してください。
まだ開業したばかりなので、確定申告はしていないのですが…
確定申告の書類がないと扶養には入れません。
という回答で、扶養には入れませんでした…。
すでに開業届を出していたので職業を「自営業」にしたのですが、それがダメだったみたいです
退職を理由に夫の扶養に入った後に、開業届を出せばよかったと後悔しました。(退職が理由の場合は退職証明書などの提出で扶養に入れます)
扶養を気にせず頑張って働けば良いや!ということで、結局それからも扶養に入らず仕事を続けています。
現在正社員などで働いていて、退職後にフリーランスで夫の扶養に入ろうと考えている方は開業届を出す前に扶養の手続きをすることをおすすめします。
開業届について詳しくは以下の記事で解説しています。
パート×フリーランスの掛け持ちの場合の扶養は?
フリーランスだけでは収入が少ない・息抜きで外で働くなどの理由でパートとフリーランスの掛け持ちをしている方も多いですよね。
パートとフリーランスを掛け持ちしていて社会保険の扶養に入りたい場合は、以下の条件を満たせば問題なく扶養に加入できます。
パートの給与所得※1とフリーランスの事業所得※2、そのほかの所得の合計が130万円未満
※1 給与所得:源泉所得税や社会保険料などを差し引いた手取りではなく「総支給額」が収入と見なされる。交通費も収入に含まれる。
※2 事業所得:フリーランスの収入。健康保険組合によって認められる経費の条件が異なるので要確認。
フリーランスが社会保険の扶養を抜けるタイミング
フリーランスの収入が増えてきたら、いつ扶養を抜ける必要があるのでしょうか?
社会保険の扶養の基準は「130万円未満」となるため、原則として月収が10万8,333円(年130万÷12ヵ月)を超えたら扶養を抜ける必要があります。
しかし、フリーランスの場合は収入が安定しておらず「先月は12万円稼げたけど、今月は4万円しか稼げなさそう」ということもあり得ますよね。
このような場合、1カ月でもオーバーしたら扶養を抜けなければいけないのでしょうか?
フリーランスが扶養を抜けるタイミングについて解説します。
1ヵ月だけならセーフの場合が多い
加入している健康保険組合にもよりますが、売り上げが月10万8,333円を超えてしまっても、1ヶ月だけの場合には扶養の対象を外れることはほとんどありません。
仕事の依頼が重なって特定の1ヶ月だけ売り上げが増えてしまった場合であれば、扶養抜けを気にする必要はないでしょう。
継続して月108,333円を超えるなら扶養から外れる
継続して月10万8,333円を超えることが考えられる場合、扶養を抜ける必要があります。
直近3ヶ月の売り上げの平均が月10万8,333円を超えると、扶養の対象から外れるケースが多いようです。
扶養の対象外にもかかわらず扶養から外れる手続きを行わないと、後から医療費や保険料を請求される恐れも。
月10万円を超えることが続いたら早めに扶養を抜ける手続きを行いましょう。
フリーランスの働き損ゾーンは130万〜160万
社会保険の扶養を抜けてしまうと、自分で国民健康保険&国民年金に加入しなければなりません。
先述の通り、国民健康保険と国民年金で年間28万程度の負担となり、一気に手取りが減ってしまいます。
扶養を抜けたら仕事を増やして160万円以上の収入になるように頑張りましょう。
160万円以上稼ぐのが難しいのであれば、仕事を断って年収130万円未満に抑えるのが賢い働き方です。
【番外編】扶養内フリーランスでも確定申告をする必要はある?
最後に、扶養内フリーランスの確定申告についても少し触れておきましょう。
扶養内でフリーランスをしていて、収入が少ない場合確定申告をする必要があるのか疑問に思う方もいるのではないしょうか。
事業所得が48万円以下であれば確定申告をする必要はありませんが、確定申告をすることでお得になるケースもあります。
確定申告が必要な収入や確定申告のやり方について詳しくは以下の記事で解説しています。
事業所得が48万円以下なら義務ではない
フリーランスとして働いている方は、収入から経費を差し引いた「事業所得」の金額が年48万円以下であれば確定申告は義務ではありません。
これは誰でも所得から差し引ける「基礎控除」が48万円(合計所得金額2,400万円以下の場合)のため、所得が48万円以下であれば所得税が0円になるからです。
ただし、住民税の申告は収入がなかったとしても必須です。確定申告を行わなかった場合、住民税の申告を忘れずに行いましょう。
所得が少ない・赤字でもした方が良いケースも
事業所得が48万円以下であったり、経費を差し引いたところ赤字であった場合でも確定申告をした方が良いケースがあります。
源泉徴収をされている
源泉徴収とは、フリーランスが支払う所得税を、クライアントがあらかじめ差し引いて国に納税する仕組みです。
実際に払うべき所得税よりも、源泉徴収された金額の方が多い場合、確定申告を行うことで還付金を受け取れます。
クライアントから報酬を受け取ったときに源泉徴収されている場合は、所得が少なくても確定申告を行いましょう。
赤字なら損益通算ができる
収入から経費を差し引いて所得が赤字になった場合、他の所得があればそれらの所得と損益通算ができます。
赤字を他の黒字事業の所得から控除すること
事業所得:-10万円 給与所得:200万円の場合→合計所得190万円にできる→節税になる!
また、それでも所得が赤字になった場合、青色申告を行っている方であれば翌年の所得から赤字分を差し引けます。
今年度が赤字でも来年度以降の節税になるため、青色申告を行っておいた方が良いでしょう。
フリーランス主婦は扶養内に抑えて賢い働き方をしよう
フリーランスの主婦は扶養内で働くことで、税金や社会保険料の負担を抑えることができます。
経費もきちんと計上して確定申告を行えば、所得を減らして節税もできます。
フリーランスになったら、税金などの知識を身につけて賢く働いていきましょう。